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京都地方裁判所 昭和48年(行ウ)18号 判決

京都市北区平野桜木町三七番地

原告

板垣謙吉

京都市上京区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地

被告

上京税務署長

喜多進

右指定代理人

岸本隆男

山口勝司

棚橋満雄

網野清子

塩崎寿弥

村上正男

山川宏美

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、原告

被告が原告に対し、昭和四三年一〇月三一日付でなした昭和四一年分所得税の更正処分および過少申告加算税賦課決定処分は何れもこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

主文と同旨。

第二当事者の主張

一、請求原因

1  被告は昭和四三年一〇月三一日、原告の昭和四一年分の所得につき、総所得金額一、五三〇、〇〇〇円、税額二九五、七七〇円とする更正処分および過少申告加算税八、七〇〇円の賦課決定処分をなした。

2  原告は被告に対し、昭和四三年一一月二七日右更正処分等に対する異議を申立てたが、昭和四四年一月一三日棄却されたので、同年一月三〇日大阪国税局長に対し審査請求をなしたが、昭和四五年二月一〇日棄却の裁決があつた。

そこで原告は昭和四五年四月二七日、京都地方裁判所に対し、右更正処分等の取消を求め訴えを提起したところ、右訴訟は昭和四七年四月二一日取下があつたものとみなされたが、原告は、その旨の通知は受けていない。

3  被告は、昭和四七年一二月六日前記更正処分等による国税に基づき、原告の有する電話加入権に対し差押処分をなした。

そこで原告は被告に対し、昭和四七年一二月二二日前記更正処分等および右差押処分に対する異議申立をしたが、昭和四八年一月三一日却下されたので、同年二月一九日右両処分に対する審査請求をなし、さらに同年三月一六日差押処分に対する審査請求を重ねてなしたところ、二月一九日付審査請求はいずれも却下し、三月一六日付の審査請求は棄却する旨の裁決があり、同年九月一三日原告に送達された。

4  しかし、本件更正処分等がなされてからすでに五年以上経過しており、右処分等は時効により取消されるべきである。

二、被告の本案前の主張

原告が取消を求める被告のした昭和四一年分所得税更正処分および加算税賦課決定処分については、原告は昭和四五年四月二七日右処分の取消請求の訴を京都地方裁判所に提起し、右訴訟は昭和四五年(行ウ)第四号事件として同裁判所に係属したが、昭和四七年四月二一日民事訴訟法第二三八条の規定により訴の取下があつたものとみなされ右訴訟は完結するに至つたものである。しかるに、原告は昭和四八年一二月三日本訴を提起した。しかし、右処分の日は昭和四三年一〇月三一日であり、裁決の日は昭和四五年二月一〇日であるから、本訴の提起は行政事件訴訟法第一四条に定める出訴期間の一年以上を経過していることが明らかである。従つて不適法として却下を免れない。

なお、原告は、昭和四八年二月一九日付で大阪国税不服審判所長に対し同一処分である右処分について再度審査請求をなしたが、右請求は前記昭和四五年二月一〇日付の裁決により既に裁決済のため不適法であるとの理由に基づき、昭和四八年八月一六日付で却下された。しかし、本訴提起のための出訴期間に関しては右却下の日は行政事件訴訟法第一四条に規定する裁決の日に当たらないことは言をまたないところというべきである。

以上により本件訴は不適法として速やかに却下されるべきである。

理由

原告が本訴において取消を求めている昭和四一年分所得税更正処分および加算税賦課決定処分がなされたのは昭和四三年一〇月三一日であり、右更正処分等に対する審査請求の裁決の日は昭和四五年二月一〇日であることは当事者間に争いがないところ、本訴提起の日は昭和四八年一二月三日であるから、右は行政事件訴訟法第一四条に定める一年の出訴期間を徒過している。

なお、訴状添付の裁決書謄本によれば原告は昭和四八年二月一九日、大阪国税不服審判所長に対し前記更正処分等について再度審査請求をなし、これに対する裁決が昭和四八年八月一六日付でなされているが、右裁決は、一旦裁決を経た後に再度原処分に対し審査請求を提起することはできないとして審査請求を却下したものであるから、本訴の出訴期間を右裁決の日を基準として定めることはできない。

また原告は、本件更正処分等にかかる国税に基く差押処分に対し、異議申立および審査請求をなしたところ、昭和四八年八月三〇日付で右審査請求を棄却する旨の裁決がなされている。しかし、差押処分は更正処分とは別個独立の処分であり、差押処分に対する審査請求において更正処分の違法事由を主張することは許されないのであるから、右裁決の日を基準として本訴の出訴期間を定めることもできない。

原告は、以上の外に出訴期間を徒過したことを正当ならしめる事由を何ら主張立証しない。

従つて、本件訴えは行政事件訴訟法第一四条第三項に違反する不適法なものであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 林義雄 裁判官 鈴木之夫 裁判官 房村精一)

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